Vol.366 2022.10.25

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Column

この季節だからこそ その3

ワインの蔵を巡り、どっしりと地に足のついた作り手の話に耳を傾けることができて何よりの味わいとなるのであるが、秋という季節は、他のどの季節よりも人と深く話をしたくなる、物事をとことん知りたくなる頃合いであるような気がしてならない。イタリアの秋はとくにそのように感じられるのである。

秋は火照った夏の体温をクールダウンさせる効果があるのか。いや、脳内を整理しようとする本能が自ずと働くのであろう。かなりの振り幅で動きつづけていた心の針である。自分自身を正常に戻す作業をやるきっかけになる。

秋だけではなく日常的に訪れるのが行きつけとなっているBarである。このBarちょっとおもしろい。日本のコーヒーショップ(以前は喫茶店と呼ばれていたが)とはやや存在理由が異なるというか、お店のあり方がそもそも異なるようだ。もちろん人との待ち合わせに使う、友人らと談笑する場といった点では日本のショップもそのような意図で使われたりもするが、イタリアのBarの場合、まず憩いの場としての立ち位置がはっきりしている。井戸端会議という言葉も昔の日本にはあったが、いまはおそらく稀少なものであろう。その井戸端会議の会場のようなところがBarなのである。

Barには多くの人が集まってきて団らんするところ。政治談議ともかく、贔屓するチームを神輿に乗せたサッカーの話題であったり、賭博(イタリアでは合法であるロトなどBarでも掛け金を落とせる)について、もちろんなんてことはない日常的な会話など事欠くことはない。磁石に吸い寄せられる砂鉄のようにあちらこちらから人が集まり、いくつかの集団をつくりっては絶え間なくから騒ぎは続いていく。

わたしの場合、自宅近くに行きつけのBarがあって、そこに立ち寄ることがひとつのルーティーンとなっている。とくに秋以降の午前中、出掛けてはコーヒーのダブル(エスプレッソ)を注文しながらバールマンとまず言葉を交わし、そのうち椅子に掛けて新聞を広げている老人のところに近づき空いた椅子に腰掛ける。午前中の3時間ほどをそこで費やしているその老人の正体はいまだわからず詮索することもない。彼が読んでいた新聞の一節(写真入り)について尋ねたことがきっかけとなって、その後、日々の30分ほどをその老人との対話に費やすことになる。

80歳くらいだろうか、かなりの博識であるそのイタリア人(完璧なイタリア語を話すが国籍すら定かではなく)との間に政治的な対話はなく、もっぱら音楽、美術、そしてイタリアの建築や歴史について問答を繰り返すのである。

堂満尚樹(音楽ライター)
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